こんにちは、難聴ライターの濃い茶です。
私は中程度の難聴で、高校3年生から補聴器を使用しています。障害者手帳は持っていません。
日本では難聴でも補聴器を使用しない人も多く、欧米諸国と比較して難聴を軽視される傾向にあります。最近は
難聴の私が実際につまずきやすい場面や、やってもらって嬉しかったことをまとめました。
身近に難聴の人がいる方の参考になれば幸いです。
難聴について
日本で障害者手帳の認定を受けるためには、補聴器を使用しても大きな声であっても会話が困難なレベルを要求されています。しかも両耳でこの水準を満たしている必要があります。
私は両耳ともに中程度難聴で、補聴器をしていれば外であってもゆっくり大きめに話してもらえれば会話ができますし、静かな室内であれば補聴器なしでも会話が成り立つ程度なのでほぼ健常です。
この「ほぼ健常」というのが厄介で。ほとんど健常者と同じように過ごしているからこそ、見えない段差につまずいて膝を擦りむいたり転んだりしています。
難聴の人が困りやすい場面
中程度難聴の私が日常生活でつまずきやすい場面です。
通常の会話なら支障なくできる補聴器ユーザーでも、このような場面では困っている可能性があります。
電話
電話は、音だけでのやりとりとなるためとても難易度が高いです。
相手の顔が見えないので、お互いのリアクションが見えないため、その難易度を高くしています。
対面の場合は、こちらが聴こえていないリアクションをすれば、自然とゆっくり話ししてくれることも多いです。電話だとこちらの顔が見えないのでそのまま話が進んでしまうので、聴こえていないことを切り出すタイミングが取りにくいです。
また、対面の場合は最終手段として筆談があります。実際、私の場合筆談になることはありませんが、それでも最終的には筆談すればいいと思えるのは安心感が違います。
レジ、カウンターでの会話
レジで「お箸つけましょうか」「温めますか」など聞かれた時はほぼ聴こえていません。
あとはスタバでの「マグカップでいいですか?」もそうですね。
カウンターを挟むことで一定の距離が空いてしまうとどうしても聞き取りにくいです。全然聴こえてないですが、いつも聞かれることが同じなので勘で答えます。たまに外してポカンとされます。
同伴している難聴の人の動きが止まったな、と思ったら質問を繰り返してあげるといいかもしれません。
3人以上でのおしゃべり
1対1の時はキャッチボールになるため、自分が理解しないと話が進みません。
そのため話がわからなくなる、とうことはないためそこまで困りません。
これが3人以上になると、自分が理解できないまま残りの2人でキャッチボールが成り立ってしまうため置いていかれてしまいます。
一度置いていかれると、聞き返しの質問の仕方すらわからないため、間に入ることも難しくそのまま話に戻れず…ということも。
どうしても会話に戻らなければ、と思った時に使うフレーズは、
「今何の話?」になりますが、会話の流れを止めてしまうことになるので切り出しにくいです。
聞く気がないわけじゃないんです。聞こえなくなってしまうだけなんです。
交通量の多い道路での会話
騒音下ではの会話はとても難しいです。
特に補聴器ユーザーの場合、人の声と同じように背後の雑音も拾ってしまうため、聴こえにくさを増長させています。
ここは聴こえないな、と思ったらその場での会話は諦め、静かな場所へ移動するまで待つか、
急ぎの場合はスマホなど文字でのやりとりに切り替える方がお互いにストレスがありません。
背後の車や自転車に気がつかない
最近の車は静かなので、背後に車が迫っていても気がつかないことが多いです。
というか、まず気がつきません。
危ないな、と思ったら肩をたたいて教えてもらえると助かります。
人それぞれの聞き取りやすい声の高さが違う
難聴と一口に言っても、高い音が聞き取りにくい人もいれば低い音が聞き取りにいくい人など、
個人差があります。
私の場合は、人の話す音域の高い女の人の声が聞き取りにいくいので、若い女の子(つまり自分ですが)の声が聞き取りにくいです。
とても残念なことに声の相性が悪い人とは会話がまともにできないこともあります。
優しい人だとそのことを気に病んでしまう人もいますが、
それは仕方のないことなのであまり気にしすぎないでくれるとこちらも気が楽です。
間に他の人が入ったり、文字でのコミュニケーションを取ったりすれば
いくらでもコミュニケーションを取る方法はあります。
嬉しかった配慮
私が難聴なことを知って配慮してくれる人には本当にありがたいことだといつも感謝しています。
実際に私がやってもらって嬉しかったことのうち、いくつか紹介します。
電話は代わりにかける・とる
電話は最小限になるようにしていますが、それでも電話がかかってくることは多々あります。
自分から代わって欲しい、とお願いするのはとても勇気がいるので、代わろうか?と聞いてもらえるとすごく気が楽になります。
予約の電話はできれば代わってもらえると、涙が出るほどありがたいです。
会話からはずれたな、という時に話をふる
3、4人で雑談しているときに、話に入れなくなったとき。
それに気がついた1人が私に直接質問を投げかけてくれることがあります。
そうすると、「ごめん聴こえてなかったんだよね。何の話?」と会話にスムーズに戻ることができます。
もちろん全部の会話についていく必要はないと思うのですが、さすがにずっと話がわからないと疎外感が強いので、こうやって会話に入るきっかけをもらえると嬉しいです。
映画やテレビは字幕をつける
どうしても吹き替え版がいい、というこだわりがなければ字幕を選んであげると格段に一緒に楽しめます。
また、テレビの音は聴こえにくいものです。リアルタイム字幕があるとみんなと同じようにテレビを楽しむことができます。
テレビの字幕は鬱陶しいな、と思うかもしれません。
私の夫は、私とテレビを見るようになって初めて字幕機能を使い始めました。
すると、字幕があると理解度が格段に違うと言って、私がいないときでも積極的に字幕を使っているそうです。使ったことがない場合はぜひ一度字幕を試してみて下さい。
伝わらない言葉は繰り返しよりも言い換え
人によって特定の単語が聞き取りにくいことがあります。2回繰り返しても伝わらない場合は、類似の単語に言い換えたり、単語ではなく文で説明するなど一工夫した方が本来伝えたかったことがより早く伝わる可能性が高いです。
助けて欲しい、が言えないのは助けてもらったことがないから
助けが欲しいなら自分からヘルプを出せ。
と言う声を聞くことがあります。
でも、助けてもらえることは当たり前ではない。
そう思っているからこそ、助けを求めるのは勇気がいることなんです。
助けて欲しい、と言えない人は助けてもらえたことがないからです。
助けてもらえた。
という経験を一度すれば「助けて欲しい」と言っても良いと思えるので
そのあとはヘルプを出せるようになります。
甘えるな、と言わずに一度手を伸ばしてあげる。
助けた側は一度きりのことかもしれませんが、
助けてもらった人にとって、それは一生を変える救いの一手かもしれません。
最後は直接聞いてみて欲しい
ここに書いてきたことはあくまで私個人の話です。
難聴の程度や、特性によって困っていることは少しずつ変わってくるので、結局のところ困っていることがないか聞いてみるのが一番です。
難聴のことを隠したがる人もいますが、隠さなくても大丈夫だと伝わった方が最終的にはその人のためにもなるはずだと私は思っています。